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半導体の品質を管理するには?重要性と評価方法を解説

半導体は現代の電子機器に不可欠な「頭脳」であり、その品質は製品の性能や安全性、ひいては企業の信頼性に直結します。そのため、半導体業界では極めて厳格な品質管理が求められ、設計から製造、検査、出荷に至る全工程で品質を確保する取り組みが不可欠です。

本記事では、半導体品質管理の重要性とその評価方法、さらに品質を徹底するための具体的な実践方法について詳しく解説します。

半導体の品質管理とは?

半導体品質管理とは、半導体製品が設計された仕様や顧客の要求を満たし、信頼性高く機能し続けることを保証するための一連の活動です。半導体は現代のあらゆる電子機器に不可欠な部品であり、その品質が最終製品の性能や安全性に直結するため、非常に厳格な品質管理が求められます。

具体的には、以下のような要素が含まれます。

信頼性の評価

半導体デバイスがは長期間使用することが多く、修理ができない場合がほとんどです。そのため、一定期間、正しい動作を保証するために信頼性の評価を行います。

加速試験などを用いて、様々な環境条件下での耐久性や寿命を評価します。

製造工程における品質管理

半導体製造は非常に複雑で微細な工程の積み重ねであり、少しの異物混入や温度・湿度の変化も品質に大きな影響を与えます。そのため、各製造プロセスにおいて、次のようなポイントを徹底して管理します。

管理名内容
環境管理・クリーンルームの維持
・温度や湿度の管理
プロセス管理・品質目標設定
・達成度の監視
・プロセスの能力評価
設備管理・設備の日常点検による以上の早期発見
・部品の修理と交換
原材料管理・入荷する原材料の品質検査
・化学薬品の品質検査

不良品や不具合を発見したら、改善案を立案して、効果を評価します。また、設計段階で潜在的なトラブルを洗い出し、未然に防止策を講じることも重要です。

完成品に対する検査と試験

半導体が完成したら、要求されている品質に達しているかどうか、検査をすることも重要です。市場に出荷する前に厳格な評価を受け、設計通りの性能を発揮したうえで、長期間安定して動作することが確認されます。ここでは、主要な検査・試験の種類は、下記の通りです。

  • 能テスト…半導体チップが設計・使用に基づいて、意図した動作をするか確認する
  • パラメトリックテスト…電気的特性を測定し、許容範囲内にあるか確認する
  • 信頼性テスト…さまざまな環境ストレス下で、安定して動作するかを試験する

こうした検査を経て、基準を満たした半導体のみが良品として製品に組み込まれます。そして、基準を満たしていない場合は不良品として除外されます。

不良品になった原因は詳細に分析され、製造プロセスの改善にフィードバックされます。高品質な製品を安定的に製造する為には、検査と試験は必要不可欠といえるでしょう。

半導体の品質を管理する重要性とは?

前述の通り、半導体の品質はさまざまな検査によって調査されます。ここでは、品質を管理する重要性について、さらに詳しく解説しましょう。

ユーザーの安全性と企業の信頼性の追求

半導体は、自動車や医療機器など、人命にかかわるシステムや機械などで広く活用されています。こうした分野では極めて高い信頼性が求められ、少しの不具合も許されません。

また、家電製品やインフラに関わる機器などは、長期間に渡って稼働することが求められます。故障が発生するとユーザーの不満につながり、企業のイメージ低下にもつながる可能性があります。

さらに半導体チップは、暗号化処理やデータの保護など、セキュリティに関する重要な役割も担っているのが特徴です。品質が低いとセキュリティの脆弱性の原因となり、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを高める原因になります。

製造コストへの影響

半導体を製造するためには、クリーンルームや露光装置など、さまざまな設備装置が必要です。規模によっては、数兆円単位の巨額な設備投資が必要なケースも珍しくありません。不良品が発生すると、こうした莫大な投資を無駄にすることになってしまいます。

また、半導体は数十~数百にも及ぶ複雑な工程を経て製造されます。それぞれの工程ではわずかな品質の問題でも、次の工程に大きな影響を与えかねません。結果として、原材料から良品を製作できる割合が低下し、製造コストが跳ね上がってしまうことも。

出荷後に不良品が発見された場合は、製品の修理や交換、顧客への案内など、さまざまな対応が必要です。コストがかかるだけでなく、ブランドイメージの低下も招いてしまいます。製造段階で品質管理を徹底すれば、こうした追加コストも削減できるでしょう。

顧客満足度の向上

高品質な半導体を製造できれば、顧客満足度の向上にもつながります。顧客は購入した製品が期待通りに動作することを望んでいます。ストレスなく長期間使用できれば満足度が向上するだけでなく企業のブランド力を高め、市場での優位性の向上にも寄与します。

品質に満足した顧客は、再度同じ製品を購入したり、口コミに繋がったりする可能性も。結果として、新規顧客の獲得にも貢献するでしょう。

半導体の品質管理にはコストがかかる?

半導体の品質を向上させるためには、初期投資が必要です。たとえば、次のような設備の投資が求められます。

  • 高精度な検査装置の導入…微細な欠陥を検出するため、高精度な検査装置や計測機器を導入する
  • クリーンルームの整備…異物混入をふせぐため、清潔な環境の維持・管理のじっし
  • 専門的な知識をもつ人材の育成…品質管理を行ううえで専門的な知識をもつ人材を育成、確保する
  • 品質のテスト期間の増加…テストする項目を増やしたり、検査機関を長くしたりする
  • 品質管理マニュアルの作成…誰が検査にあたっても同じ品質を維持できるように、マニュアルを整備する

これらの設備の投資や運用に関するコストは、数千万~数億円かかることもあります。効果が出るまでは時間を要することも、デメリットといえるでしょう。

長期的な目線ではコスト削減につながる

品質とコストは、一見すると相反する項目のように思えます。しかし、長期的な視点で考えると、高品質な半導体はコスト削減にもつながる可能性があります。ここからは、品質とコストの関連性を解説しましょう。

不良品を削減できる

品質管理を徹底すると、不良品の発生を大幅に削減することが可能です。半導体の製造は多くのコストが発生します。不良品の割合が高ければ製造コストが跳ね上がるだけでなく、廃棄コストもかかります。

また、不良品が削減できれば、再加工や改善のための検査が必要ありません。それに伴って原材料や人件費など、さまざまなコストが削減できます。

製造プロセスを効率化できる

高品質な機械の導入は、短期的に見れば大きなコストが発生します。しかし、優れた機械を採用できれば製造プロセスを効率化できるとともに、開発時間も短縮できます。

さらに、微細な不具合を発見できる検査装置が導入できれば、故障につながる前兆を予知することが可能です。結果として、突発的な装置停止による製造ラインの停止を防ぐこともできます。

市場のリコール費用の削減

出荷後に不良品が発覚してしまうと、製品のリコールが求められます。リコールは、製造費用よりもはるかに大きなコストがかかるケースも。

出荷後に不良品が発覚してしまうと、製品のリコールが求められます。リコールは、製造費用よりもはるかに大きなコストがかかるケースも。

品質管理を徹底すれば、リコールの発生割合を減少させることが可能です。結果として、クレーム対応やアフターサービスの費用を大幅に削減できます。

品質管理を徹底する方法は?

品質管理を徹底するためには、設備を投入するだけは不十分です。ここでは、具体的な方法について解説しましょう。

PDCAサイクル

PDCAサイクルとは、不良品が見つかった場合、専門のチームが詳細な分析を行い、物理的な故障箇所と電気的特性変化を特定することです。その後、なぜその故障が起きたのかを徹底的に掘り下げます。結果として、同じ不具合が再発するのを防ぎ、プロセスや設計の改善につなげます。

たとえば、「今期の不良品率を〇%削減する」という目標を設定します。その後具体的な改善策(Do)を実施後、その効果を数値で評価しましょう(Check)。効果があれば標準化し(Act)、さらに改善策を継続します。

トレーサビリティの確保

トレーサビリティとは、製品の原材料の調達から生産、流通、消費、廃棄に至るまでの履歴を追跡できる状態にすることです。

製造されたすべての半導体チップにロット番号やシリアル番号を付与し、どの原材料が使われ、どの製造装置で、どの作業者が、いつ加工したかといった情報をデータベースで管理します。

万が一市場で不良品が発生した場合でも、その原因を迅速に特定し、影響範囲を限定して回収や改善対応を効率的に行えるようにします。

5S活動の徹底

半導体では、わずかな不純物の混入も動作不良につながる可能性があります。環境を整えるためには、5S活動の徹底が有効です。

活動名内容
整理不要なものを排除し、必要なものだけを設置する
整頓必要なものをすぐに取り出せるよう、配置場所を整える
清掃環境を清潔に保ち、設備の異常を早期発見する
清潔整理整頓を維持する仕組みを作る
しつけ決められたルールを守る習慣を、全員で身に着ける

たとえば、半導体工場では、クリーンルーム内の工具や備品の置き場所を厳密に定めるのが重要です。資材の置き場はラインを引く、清掃は塵が舞い上がらない方法で実践するなど、清潔を保てるよう徹底しましょう。

作業環境が改善されれば、異物混入やヒューマンエラーのリスクが低減できます。環境が維持できるよう、従業員全員の研修も適宜実施してください。

まとめ

半導体の品質管理は、信頼性の高い製品を安定供給し、最終製品の性能や安全性を保証するために不可欠です。製造工程での徹底した品質管理、機能・パラメトリック・信頼性といった多岐にわたる厳格な検査、そして不良解析を通じた継続的な改善が重要となります。

品質向上への投資は、短期的にはコストが増加しているように思えるかもしれません。しかし長期的に見れば不良品削減、製造効率化、リコール費用抑制、顧客満足度向上に繋がり、企業の競争力を高める戦略的な投資となります。PDCAサイクル、トレーサビリティ、5S活動などの実践を通じて、半導体品質管理を徹底し、持続的な成長を実現しましょう。

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